己の無知にアクセスすることから始まる | 田村洋一 | サンタフェ通信

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己の無知にアクセスすることから始まる

この十数年はエグゼクティブコーチングの依頼が相次いでいて、非常に多くの企業経営者や関係する社員・従業員の皆さんの話を聞いています。

 

複雑な経営環境で高度な意思決定に携わる経営者には、高い能力を求められるばかりでなく、人間的な強さが求められます。厳しい判断を迫られ、人や組織への細やかな配慮が求められることはもちろんです。

 

そうした中、クライアント企業組織のプロジェクトでインタビューを重ねていたところ、「どうやって短い時間でそこまで深い話を聞き出しているのですか?」と尋ねられました。「ふだんはこんなコアな話をできないのに、いま数十分で聞かれていました。どうやったらできるんですか」と訊かれたのです。

 

私が答えたのは次の2点です。

 

まず、会話の目的を明確に意図することです。

 

私の仕事では、ときにはかなりパーソナルなことやディープな話も聞きます。その際に完全な守秘義務を履行することはもちろんですが、「何のために聴くのか」を明確にします。エグゼクティブコーチングの場合なら、経営者のマネジメントが向上し、活力のある組織を作ることです。

 

プロフェッショナルとして自分に与えられた目的に忠実に従うことが大切で、そのために全てのコミュニケーションがあります。

 

もうひとつは、自分をまっさらにして謙虚に聞くことです。

 

同じ業界や同じ会社のことを聞き続けていると、「もう知っている」という錯覚に囚われることがあります。自分の知識を過信するのです。「もう知っている」と思うと、それ以上は深く聞くことができません。知っているという錯覚を打ち払い、自分の過信を戒め、初心で聞く必要があります。エドガー・シャインの言う「無知にアクセスする」ということです。自分が何を知らないか、どれだけ知らないかを意識して、無知を照らすように質問して傾聴するのです。

 

その結果として聞かせてもらう話は、私にとっては望外の喜びです。

 

対話によって触れる真実をクライアントの人と組織のために最大限活かすこと。立場上知り得た秘密を完全に守ること。プロとしての務めを果たすことによって得られる「役得」は多くの優れた企業人の人生に触れることです。

 

 

サンタフェ通信12月25日より一部抜粋しています。


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