思考と対話を稽古する「ディベート道場」 | 田村洋一

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思考と対話を稽古する「ディベート道場」

この本は2種類の読者に向けて書かれています。

 

ひとつめは、ディベートを基礎から学びたい人です。今までディベートを学んだことがない、あるいは少しかじっただけでやめてしまったという人たちが、一からディベートを学ぶための入門書として本書は書かれています。

 

本書の材料となったのは、2012年から毎月開催しているディベート道場です。そこで私が話してきたことや稽古してきた内容を、編集担当の糸賀さんが録音し、文字に書き起こしてくれました(語りかけるような話し言葉で書かれているのはそのためです。もとは、道場でしゃべった内容なのです)。

 

ディベート道場には、ディベートを学ぶのが全く初めての社会人や学生が集まっています。論理的思考や合理的意思決定を学びたい、コミュニケーションや分析のスキルを高めたい、そういう動機で集まっている人たちに向けた解説です。

 

したがって、本書の解説は実際にディベートを学んでいる人が何年にもわたって受け続けているもので、本書を手にした人がディベートの初心者であれば、ディベートを理解して実践するために格好の教科書となるかもしれません。

 

もうひとつの読者層は、ディベート経験者・指導者です。すでにディベートを学んで知っており、ディベート教育の恩恵を受け、機を見て他人にディベートを教えている人たちです。

 

本書でも詳述した通り、ディベートは短い時間で非常に広い範囲の事柄を極めて深く掘り下げ、しかも実践的に白黒はっきりさせる知的活動です。日常の活動とはかなりかけ離れたものであり、経験者でないと理解しがたいでしょう。未経験者に説明したり指導したりするのは難しいものです。

 

ディベート道場では、全くの初心者たちが、ディベートをゲームのごとく遊びながら身につける稽古を積んでいます。一見とっつきにくい概念や用語も、本書で紹介する演習や実習を通して身近でわかりやすいものにしています。

 

本書を「学校や職場でディベートを活用したい」「子供の教育や社員の育成のためにディベートを導入したい」と考える指導者や教育者にとってのガイドとして活用してもらえれば嬉しく思います。

 

ディベートはスポーツ競技のようなもので、いくら本を読んで理解しても、実際に取り組んでみなければその真価はわかりません。これは私自身の経験に基づいています。

 

私は1983年に上智大学で英語ディベートに触れ、学生時代に嫌と言うほどディベートをしてきました。それは好きなスポーツに打ち込むような体験でした。明けても暮れてもディベートのことを考え、勝った負けたと一喜一憂し、少しでも強いプレイヤー(ディベーター)になろうと工夫し、仲間たちと切磋琢磨してきました。また、学年が進むにつれて下級生や他校の学生に指導したりレクチャーしたりすることも増えました。

 

ディベートを通して学んだことは、その後の学業で哲学や思想の探求にも役立ちました。また、ディベートを通じて親しむことになったシステム思考(システム論的アプローチ)は、ビジネス教育を経て自分自身のプロとしての基礎力となりました。

 

そして社会においてビジネスや教育を実践するうちに、自分の中に形成された「ディベート思考」が、非常に確かなインフラとして機能していることに気がつきます。

 

それは私個人に限ったことではありません。

 

上智大学英語学科の先輩であり、直接影響を受けることも多かった苫米地英人さんは、研究者・評論家として、八面六臂のご活躍ですが、そのベースにはディベート思考があったと明言しています(余談だが、ディベート道場を開講することになったきっかけは苫米地さんから頼まれたディベートセミナーの仕事でした)。

 

また、本書のインタビュー編で協力してくれた北野宏明さん、森川勇治さん、佐藤義典さん、山中礼二さん、友末優子さんは、それぞれの分野でディベート思考を活用して大活躍されています。詳しくはぜひインタビュー編をお読みください。ディベートが単なる詭弁や言葉遊びでないことは、彼らの社会的活躍や貢献が最も雄弁に語っています。

 

そして本書出版の出発点となったディベート道場は、「社会人として仕事をしながら自分の時間でディベートを学びたい」と言って集まった道場参加者と、それを手伝ってくれた有志の方々のお陰で実現しました。

 

初年度に師範代を務めてくださった古波倉正嗣さんと松下正嗣さん、毎月熱心に参加してくれた多くの皆さん、指導役の塚田喜己さん、酒井洋一さん、事務局として全てを差配してくれている森山千賀子さん。皆さんがいなければディベート道場は存立していません。

 

何より心を打たれたのは、ディベート道場で初めてディベートを学んだことから多くの人たちが目覚ましい成長を遂げ、仕事や生活や人生にまでその効果が波及していったことです。

 

毎月の道場だけでなく、ネット上で稽古をしたり、集まってミーティングをしたり、公のディベート大会に出場したりして、ディベートを存分に遊び、そこで学んだことを現実生活に活かしていく。

 

本書は、そういう生きたディベート稽古を紙上で可能な限り再現するべく生まれました。

 

糸賀さんがまとめてくれた原稿を多くの方々が査読してくれ、読みやすく使いやすい書物になるようにと大幅な加筆修正を行いました。過去に出版されているオーソドックスなディベートの教科書や参考書とは違う、実用性とゲーム性を備えた比類のない指南書になっています。

 

最初のページから通読して教育ディベートの全体像をつかんでもいいし、興味を惹かれる章を拾い読みしてもいい。ディベートに馴染みのある読者は、自分の理解を確かめるために読んでもいいし、ディベートをゲームのように活用するのもいい。

 

ぜひ本書を自分の仕事や生活や人生のために創造的に使ってください。

 

 

https://www.amazon.co.jp/dp/B06ZZ847N3/

 

 

サンタフェ通信4月21日より


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