「これはあれかな」症候群 | システム思考 | 田村洋一

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「これはあれかな」症候群

小さい子供たちは純粋な好奇心のかたまりです。

 

「これはなあに?」
「どうしてなの?」
「それでどうなるの?」

 

新しいことをどんどんおぼえて、できないことがどんどんできるようになっていきます。小さい子供たちは、人がどうやって学ぶか、を大人の私たちに見せてくれます。

 

大人になるとなかなかこうはいきません。どうしても自分の知識や経験に縛られています。新しいことに触れても、

 

「これは(私の知ってる)あれかな」

 

と既存の知識に結びつけ、新しいことをそのまま学ぶことができません。「私はもう知っている」という思い込みほど学習を妨げるものはないのです。

 

最近20年くらいでビジネスでも流行した「仮説駆動アプローチ(hypothesis-driven approaches)」も同じ穴のムジナです。

 

現実をよく観察して理解する前に「これはあれだな」と当たりをつけ(いわゆる「仮説形成」)、「きっとこれだな」と証拠を集め(いわゆる「仮説検証」)、仮説に合致するデータを残し、仮説に合致しないデータを捨てる、似非科学的メソッドです。もちろん本来の科学的アプローチは違います。反証データこそ大切なのです。しかしサイエンスの名を騙った間違った方法が横行しています。

 

最も大切なことは、白いキャンバスからスタートすることです。

 

キャンバスにすでに何かが描いてあったら真っさらな観察と思考の妨げになります。現実を観る前に「きっと(私の知っている)あれに違いない」という先入観や固定観念があると、正しく現実を知ることを邪魔します。

 

これは決して簡単なことではありません。先入観を持たない子供たちと違って、私たちはたくさんの経験と知識によって同時に偏見や思い込みに塗れているからです。

 

しかし訓練と習慣によって私たちは誰でも「絵で考える」ことができるようになります。「絵を描く」前に心に真っ白なキャンバスを用意することができるようになります。

 

「これはあれかな」ではなく、「これは何かな」と好奇心を全開にする・・・。

 

それができるようになると世界は一変します。今まで既存の言葉で「理解していた」つもりのことが、まるで子供たちが新鮮な経験をするように新しい見え方で見えるようになるでしょう。

 

サンタフェ通信5月19日より


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