本物の思想と技術に触れる体験 | ミルトン・エリクソン | 田村洋一

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本物の思想と技術に触れる体験

先週末は、催眠の大家として知られるミルトン・エリクソンの偉業を今日まで伝える療法家・研究家の代表のひとりとして知られるアーネスト・ロッシ博士の話を聞く機会に恵まれました。

 

博士が「催眠(ヒプノシス)という言葉が人口に膾炙していないのは本当に残念だ」と嘆くのを聞いて奇異に感じました。本当にそうでしょうか。そして何がそんなに残念なのでしょうか。

 

「ロッシ博士、催眠という言葉に人気がない、マインドフルネスとか瞑想とか、サイエンスとかスピリチュアリティという言葉が使われるのに比べて、ヒプノシスという単語の使われることが少ない、という事実はわかりました。では、もしヒプノシスという単語がもっと使われ、人気が出たら、世界はどう変わるのでしょうか」

 

耳が遠いというご高齢のロッシ博士に向かって私は大きな声でゆっくりと質問しました。博士は私の質問をなかなか聞き取れず、何度も聞き返されました。そして博士の奥さんのキャスリンが私の質問を大きな声でゆっくり繰り返して博士に伝えてくれました。

 

ようやく私の質問を理解した博士は、にっこりと嬉しそうに笑って、こう答えたのです。

 

「ヒプノシス(催眠)が人口に膾炙して、世界中の皆が日常で自己催眠を実践できるようになれば、現代社会のストレスは減って、依存症などの精神疾患も減り、日本の過労死も自殺も激減し、人々が主体性を取り戻し、自由で健康で創造的な暮らしを送るようになるだろう」

 

それまで1時間以上黙ってロッシ博士の話を聞いていた私は、ここでやっと博士の伝えたかったことの意味がわかりました。

 

「催眠」とは、催眠療法士がかける魔法の類いではなく、私たち一人ひとりが自分の健康や創造性を増進するために使うことができる自然な道具だ、催眠療法のメソッドやテクニックは、私たち自身の心身の自由を促進するための方法にすぎない、私たちには自ら豊かに健やかになっていこうとする心や身体の働きが備わっているのだ、と。

 

ミルトン・エリクソンの残したエリクソニアン催眠の技術と思想は、まさにそのことを伝えているのだ、と。

 

有意義で愉快で癒しと気づきと学びに満ちた週末になりました。

 

本物の技術や思想に触れた時間でした。

 

サンタフェ通信10月13日より


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