創造プロセスと構造思考 | ロバート・フリッツ | 田村洋一

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創造プロセスと構造思考

いよいよ来年9月にロバート・フリッツを日本に呼ぶことになりました。これは私の積年の夢の実現です。そして新たな地平の開けるイベントです。

 

どういうことなのか、少しお話しさせてください。

 

ロバートは多くの人たちが呼ぶところの天才です。ロバートを師匠と呼ぶピーター・センゲは、学習する組織やシステム思考が進化してきた過程でロバートの明晰な思考と実践が決定的な役割を果たしていると言っています。実際にThe Fifth Discipline(邦訳「学習する組織」)などの著書や論文で展開されているキーコンセプトのいくつかはロバートによる構造思考に源流があることがわかります。

 

多くの人が複雑さを前に立ちすくんでしまう時に、ロバートは常に創造的なアプローチをとり、比類のない成果を上げています。もともと作曲家であり、音楽のプロとしてのバックグラウンドを持ちながら、企業組織のコンサルティング、芸術家のトレーニング、映画の製作・監督など、さまざまな分野でのロバートの活躍は、彼が狭い分野のエキスパートではなく、創造という広い世界のプロフェッショナルであることを物語っています。

 

次に、ロバートは素晴らしい教師です。多くのクリエイターやアーティストが作品を作ることに秀でていながら、その方法を説明できない、他者と共有できない、というのとは対照的に、ロバートは創造プロセスを明るみに出し、これでもかというほど具体的にその方法を指し示してくれます。

 

ロバートは自分でやるだけでなく、やり方を紐解いて他の人に見せて教える名人でもあるのです。これはなかなかできることではありません。

 

「創造プロセスは人類が発明した中で最も成功した方法だ」とロバートは喝破します。創造プロセスは芸術家や製作者など一部の人たちの専売特許ではなく、私たち人類全てに開かれたフリーウェアなのです。ロバートはその発見を惜しげもなく共有してくれます。

 

私がロバートの考え方に出会ったのは今から25年前です。それはこれまで知っていたどんな方法とも異なる画期的なアプローチでした。

 

世の中のほとんどの人が問題解決にかまけている時、ロバートは常に創造の視点で考え、創造の方法を示します。世の中のほとんどの人が状況に埋もれて四苦八苦している時、ロバートは常に構造的に考え、「母なる構造」(Mother Structure)を味方につけて創り出したい結果を創り出します。世の中のほとんどの人が複雑さや不確実性に圧倒されている時、ロバートは常に明快な方向を見出してくれます。

 

私がロバートと奥さんのロザリンドに米国バーモント州の自宅で出会ったのは、今から15年前の春でした。そう、たまたまその半年後に会社勤めを辞めて独立し、メタノイア・リミテッドという自分の会社を設立することになるのですが、その時はまだそんな計画はありませんでした。ロバートの構造思考(structural thinking)が私の独立事業を力強く支え、推し進めてくれたことは言うまでもありません。

 

私がその時にバーモントの美しい緑と山の中で教わった構造思考の基礎(Fundamentals of Structural Thinking)を来年9月に初来日するロバートに教えてもらおうと考えています。ロバートと並んで素晴らしい教師であり、独自のスタイルとスキルを備えたロザリンドにも教えてもらいます。ロバートとロザリンドに(今の計画では)長野の女神山ライフセンターに来てもらい、ワークショップを開こう、というのが今回の贅沢な計画です。

 

このトレーニングに参加した人に私が期待していることがいくつかあります。

 

まず第一に、学んだことを自分自身の人生やキャリアにすぐに活かしてほしい、ということです。これは私が言うまでもなく、おそらく全ての参加者がそうするだろうとは思っています。しかしあえて強調したいポイントでもあります。

 

何かを創り上げる。そのプロセスそのものが人を元気にします。逆境においても順境においても、創りたい何かを創り上げる。雨の日も風の日も、晴れた日も曇った日も、創りたい何かを創り上げる。それが創作者の人生であり、生活であり、仕事です。自己マスタリーが全ての基礎です。

 

第二に、これを組織や社会を変えるために創造的に使ってほしい。ロバートの教える創造プロセスは、国際機関や政府機関、途上国の開発や都市計画、地域社会の活性化、企業の組織開発や人材育成、芸術活動、教育現場など、ありとあらゆる社会や組織の現場で活用され、大いなる成果を上げています。

 

このトレーニングに参加する皆さんの中には、すでに企業の要職に就いていたり、コーチやコンサルタントという立場で組織や集団を支援したり、あるいはそれぞれの専門分野で活躍している人が多いと思います。すでに創造的な成果を上げている人も少なくないでしょう。しかし創造プロセスや構造思考を学んだら、今までやっていたことが小さく見えるほどの視野の広がりを体験することになります。そして創造していく力が自分に備わっていること、ロバートのような天才だけの特権ではなく、普通の人たちが普通の能力を使って偉大なことを成し遂げることができるのだと学べることを保証します。

 

最後に、学んだことをぜひ仲間や友人や近くの人たちと分かち合い、ともに学んでほしい。

 

創造プロセスと構造思考は、ひとりでいつでも使える道具です。たったひとりでも組織を変え、社会を変え、自分の創りたいものを創り始めることができます。世界をどのように見て、どんな構造にしていくか。創造思考は無敵と言っても言いすぎではありません。

 

しかし大きな仕事はひとりで完成するものではありません。いつも仲間や同僚と力を合わせ、知恵を集めて協働するものです。大きな協働作業をする際に本領を発揮するのが創造プロセスなのです。皆が同じビジョンを描き、同じリアリティを見て、分業し、協働していく。その時の共通言語が構造思考です。

 

女神山に集った仲間たちがいる日本中や世界中に散らばり、それぞれの世界で創り出したいことを創り出していく。

 

それが私のビジョンです。

 

サンタフェ通信11月3日より

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