自己本位に生きること | アイン・ランド | 田村洋一

このエントリーをはてなブックマークに追加

自己本位に生きること

私は言葉の真の意味でselfishに生きています。セルフィッシュというのは「自分勝手でわがまま」というよりは「自己本位」という意味で、自分の大切と思うことを中心に据えて仕事や生活を営んでいます。

 

もしただ単に自分勝手でわがままに暮らしていたら、そのうち友人にも取引先にも愛想を尽かされ、仕事も暮らしも立ち行かなくなるでしょう。それは望むところではありません。

 

自己本位に生きることは、アイン・ランドの哲学オブジェクティビズム(Objectivism)における中核の思想です。人は家族のためや国家のためや社会のために生きるのではなく、何よりも自分自身のために生きなくてはならない。アイン・ランドはそう喝破し、全ての自己犠牲を完全に否定しました。

 

今週ニューヨークで開催された哲学ディベートにおける論題はこれでした。「Selfishnessは美徳か(Is selfishness a virtue?)」の肯定側にアイン・ランド研究所のYaron Brook、否定側に論客のGene Epsteinが立ち、丁々発止・侃侃諤諤の激論が交わされました。

 

ヤロンはまず言葉の意味を正すべきだと論を張ります(これはアイン・ランドの主張そのままです)。もともとselfishには他者を犠牲にするという意味はなく、本来セルフィッシュとは自己を大切にするという意味だ、人は生まれながらにして自分自身の人生を生きる権利がある、自己本位に最高の人生を生きるべきだ、というのがヤロンの肯定側ケースです。スティーブ・ジョブズもビル・ゲイツも自己利益を追求したからこそ大成功した、と言うのです。

 

否定側のジーンは真っ先にこの言葉の定義に異を唱え、最高の人生を生きることはselfishなどではない、スティーブ・ジョブズの偉業をセルフィッシュと呼ぶ謂れがないと否定します。

 

ディベートは途中に聴衆との質疑応答を挟んだオックスフォード形式で行われ、ライブ中継で視聴していた大勢の観衆を含んだオーディエンス投票で判定されました。肯定側のヤロンは47パーセントの賛成票を57パーセントに伸ばし、否定側のジーンは20パーセントの否定票を35パーセントに伸ばし、僅差で否定側の勝利です(どれだけポイントを増やしたかで判定されるというルール)。

 

ディベートには勝敗以上に大切なことがあります。それは議論を戦わすプロセスにおいて思考を深め、友情を深め、人生を豊かにすることです。

 

今週のディベートイベントは大成功だったと言えるでしょう。

 

サンタフェ通信1月19日より

トップへ戻る