コーチング | 田村洋一

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ある強烈なマネジャーの話

部下を叱り飛ばし、萎縮させてしまうことで評判のマネジャーがいました。気の弱い部下は自分の意見を言えなくなり、自分の意見を言えない部下はますます叱られるというのです。

 

お会いしてみると、実に理知的で誠実で快活で、にこやかな方でした。

 

そして部下を叱りつけること、ときに厳しすぎる口調で追い詰めてしまうことについても明確な自覚を持っており、

 

「自分が正しいと思うことについては譲ることができず、ついつい語気も強くなってしまうのです」

 

と自戒されていました。はっきりと気づいているものの、いったん感情が溢れると抑制するのが難しいのだと言うのです。

 

部下を叱り飛ばしたり意見が衝突したりする頻度を聞くと、ほとんど毎週のことだということです。同じパターンを何度も繰り返し、改善しようとしながらも、なかなかよくならないと自嘲しています。

 

コンサルタントとしてアドバイスを求められた私はこう言いました。次に部下と衝突した時は、

 

「よし、とことんとっちめてやる」

 

と自分にまず言い聞かせてから「攻撃」を開始してください、と。

 

そのアドバイスを聞いたその人は目を丸くして驚いていました。

 

「そんなことをしていいんですか? ただでさえパワハラだと非難されてるのに」

 

私は答えました。

 

「わざわざ言い聞かせなくても結果的に部下を攻撃してしまっているのですよね? 今度は意識的に、自覚を持って攻撃してみてください」と。

 

私のアドバイスを半信半疑で受け取ったマネジャーは、実際に部下との衝突で試してみて、驚く結果を得ていました。意識的に攻撃していたら、相手の怯える様子がよくわかり、逆に相手の意見や考えをもっとよく聞く気になり、かえって会話が深まったと言うのです。

 

自分の中の強い衝動を押さえ込もうとする代わりに、正直に認めてやり、自分自身を自由にしてやることから、言ってみれば精神が解放され、衝突している会話相手に対しても余裕が生まれたのですね。

 

自分の強い衝動を抑圧するばかりでなく、少し解放してやることで、人間は自由になることがあります。

 

(上記のアドバイスは個人の人柄と状況の総合的理解に基づき、クライアントとの間の信頼関係の中で提供されたものであり、一律に与えられる一般的な助言ではありません。)

 

サンタフェ通信3月9日より

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