プロセスコンサルテーション | 田村洋一

このエントリーをはてなブックマークに追加

プロセスコンサルテーションとアイデンティティ問題

エドガー・シャインのプロセスコンサルテーションという方法に出会って20年が経ちます。コンサルティングのやり方とコンサルタントとしての在り方をずっと教えてくれているシステムとして、私にとってこれに代わるものもなければこれを超えるものもありません。

 

STARクラブ(システム思考実践研究会)ではエドガー・シャイン氏自身による講義に耳を傾け、

 

・プロセスコンサルテーションとは何か
・なぜプロセスコンサルテーションが必要なのか
・どうやってプロセスコンサルテーションを行うのか
・プロセスコンサルテーションにおける4つの介入タイプ
・プロセスコンサルテーションにおける3つの役割
・役割と介入方法を選ぶための2つのポイント
・チームワークにおけるプロセスコンサルテーション

 

について学び、3ヶ月目の今月はプロセスコンサルテーションのエッセンスをシャイン氏が言語化した十則をレビューしました。

 

メンバーがシェアしてくれたコンサルテーションの事例を題材にロールプレイを行い、

 

1.何が起こっていたのかの観察
2.何が起こり得るかの考察

 

を行いました。

 

今夜のケースは、想定していなかったクライアントの異例の沈黙に対して、どんな効果的な介入が可能なのか、というよくある難題を含むものでした。

 

プロセスコンサルテーションにおいてattentive silence、注意を向けた沈黙は重要な時間です。一方で、クライアントが何らかの理由で自分の気持ちや考えを充分にコンサルタントに伝えられないための沈黙が訪れたとしたら、援助者としてのコンサルタントにはどういう介入オプションがあるのでしょうか。

 

コンサルタントとクライアントの関係に非対称性があり、自分を一段低い社会的位置にいると認識しているためにクライアントが沈黙していたとしたら、その場合に援助者(コンサルタント)はどうやって被援助者(クライアント)との関係をより均衡した対等な信頼関係に近づけ、より効果的な援助を施すことができるのでしょうか。

 

いろいろとクリエイティブなアプローチがあるなか、

 

・目の前のリアリティに接する
・己の無知にアクセスする
・迷ったときは相談する
・建設的機会主義で対決する

 

などのプロセスコンサルテーション原則から、クライアントに助言を求めるというプロセスコンサルタントの常套手段も紹介されました。相手の助言や助力、主観や意見を求めるということによって、コンサルタントは自分をより弱い立場に降りていき、クライアントと均衡のとれた援助関係に近づくのです。

 

さらにもうひとつ、驚くほど多くのコンサルタント(援助者)が直面する難題がひとつあります。

 

それは、アイデンティティ問題です。

 

「クライアントに助言を求める? とんでもない。コンサルタントはクライアントに助言を与えるからこそ報酬を受け取れるのだ。わからないからクライアントに尋ねるなんていうみっともないことはできない。そんな醜態を晒すことはコンサルタントの恥だ…」

 

驚くほど多くの援助者(コンサルタント)がこういう思い込みを無意識のうちに胸中に抱いています。

 

自分が「知らない」「わからない」「助けが必要だ」ということを開示できない。自分は「知っている」「わかっている」「助けを必要としない」援助者であるというアイデンティティに囚われているのです。

 

このアイデンティティ病(メンタルモデルの特徴的要素)に無自覚なままだと、どんなにプロセスコンサルテーションのエッセンスを学んでも実際の現場で活かすことができません。

 

アイデンティティ問題については引き続き実践テーマのひとつとして見ていきたいと思います。

 

サンタフェ通信3月23日より

トップへ戻る