成功する人の習慣 | 田村洋一

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成功する人はこういうことをしている・・・
成功しない人はこういうことをしていない・・・
だから成功するためにはこういうことをすべきである

 

そういう論法で書かれた書物や説かれた方法が数え切れないほどたくさんあります。その中にはもっともらしい説もたくさんあります。かくいう私も今から15年前に出版社から執筆依頼を受けた本のタイトルが「なぜあの人だと話がまとまるのか」で、これはファシリテーションが上手な人が何をやっているのかを詳細に解説した本でした(2011年に加筆して「どんな話もまとまる技術」として改訂出版しました)。

 

しかし、この論法に正当性はあるのでしょうか。

 

お金持ちが高級レストランで豪華な食事をしているとします。それがお金持ちの習慣だったとして、その習慣を真似したらお金持ちになるのでしょうか。もちろんそんなことはありません。財産や収入がないのに過分な支出を続ければ、確実に破産するでしょう。お金持ちが高価な服装をして歩く習慣を持っているとします。その服装を真似することでお金持ちになるのでしょうか。もちろんそんなことはありません。

 

お金持ちが高級車を何台も持っていて、自分で運転したり、運転士に運転させたりしていたとして・・・
こういう馬鹿げた例を挙げれば、一発でそれが馬鹿げた例だとわかります。因果関係が逆だったり、あるいは因果関係がなかったりするのです。一定数の成功する人やお金持ちがある習慣を共有していたときに、それが原因なのか結果なのかそれとも偶然なのかを知らないで、「成功の習慣」と決めつけることはできません。

 

ところが世間の「研究」と称されるものの多くがこの愚に陥っています。
ポジティブに考えれば幸せになる。もちろんそういうこともあります。苦しいときに苦しがるばかりでなく、前向きに考えたほうがいい。ピンチはチャンスでもある。大変なことも過ぎ去れば思い出になり、やり過ごせば勇気になる。

 

このくらいのことは昔からの知恵です。

 

ところがポジティブに考える習慣と幸せを感じる度合いを比べて因果関係だと思ってしまうとそれはもう深刻な錯覚の始まりです。幸せなときは自然と前向きな気持ちになります。不幸せなときは自然と暗い気持ちになります。
ジャンクフードを食べている人たちは統計的に健康だ、というデータもあります。ジャンクフードを食べているから健康になったというのでしょうか。それとも若くて元気な人たちがジャンクフードを食べているのでしょうか。病気の人たちはジャンクフードを食べているのでしょうか。
随伴現象ではなく、因果関係を見なければなりません。そうでないとどこへ行っても似非科学に騙され続けることになりかねません。

 

サンタフェ通信9月7日より

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