自分の味覚を信用できるか | 田村洋一

このエントリーをはてなブックマークに追加

自分の味覚を信用できるか

「おいしい料理はどうやっておいしいとわかるか?」と質問したとき、「値段でわかる」と答えた人がいました。「高い値段ならおいしい料理だと推測できる」と大真面目で言っていました。

 

最初は冗談だと思っていたら完全に本気でした。

 

しかし世間の多くの人はこの人と同じような判断をしています。しかもこの人と違ってそういう判断をしていることに自分で気づいていないのです。

 

高い値段を払ったからいいものだと思い込むというのは価格と価値を混同する行為です。マーケティングの専門家はこの錯覚を利用してわざわざ高額の値段をつけ、「これはいい商品ですよ」とシグナリングを行い、品質が同じ商品を高く買わせることに成功していくほどです。

 

これは値札だけの話ではありません。

 

物事の価値を外見の体裁によって判断してしまうのは、自分の味覚や感覚を信用することができないからです。自分以外の誰かがつけた値札や評判を信じてしまうのです。

 

長い行列ができている店があります。世間の人たちの中には「こんなに長い行列ができてる店だからきっといい店に違いない」というふうに自分の判断ではなく世間の判断によって行動を決定する人が驚くほど多いのです。

 

そういう意味においては、「高い値段ならおいしい料理だと推測できる」と答えた件の人は、自分の感覚と世間の評価との違いを自覚している分だけ優れているのかもしれません。

 

皆さんはどうでしょうか。どれだけ自分自身の感覚や味覚、判断力や審美眼を信用していますか。

 

サンタフェ通信10月19日より

トップへ戻る