ファシリテーション | 田村洋一

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自分ひとりでは行けない場所に連れていってくれる乗り物

企業のリーダーシップトレーニングとしてファシリテーションを教えるようになって16年経ちます。

 

ファシリテーションとは何かのプロセスを楽にすることを言います。ミーティング、プロジェクト、チーム、組織、コミュニティ、社会、どこにフォーカスするかによって見えてくるものも変われば扱うことも変わっていきます。

 

自分がファシリテーションを知るようになったのは今から20年前、たまたま縁があって参加した戦略コンサルティングファームでの共通言語のひとつがファシリテーションでした。

 

これが衝撃的な出会いだったのです。

 

そのファームで仕事するコンサルタント全員がファシリテーションを知っていました。もちろん上手い人と普通の人がいるのですが、誰もがファシリテーションを知っていて、誰でもファシリテーションができるのです。こんなに楽で、楽しいことがあるでしょうか。

 

それ以前は、ミーティングが楽しいとか有益とか生産的とか創造的だというイメージはあまり持っていませんでした。どちらかといえばミーティングは邪魔なもので、必要悪で、組織の中では多すぎて、最小限に減らすべき対象でした。

 

ところが、ファシリテーションが共通言語の職場で仕事を始めたら、ミーティングは短く、的を射ていて、仕事の助けになる有益なものへと様変わりしました。夜の11時過ぎにミーティングが召集されることもありましたが、何の不満もありませんでした。必要に応じてさっと集まって必要な話し合いと取り決めを行い、さっと別れて各自で必要な仕事をする。実にプロフェッショナルな仕事の仕方だと思ったものです。

 

ファシリテーションの対象はミーティングだけではありません。プロジェクトの運営、クライアントとの関係、ビジネスのマネジメントなど、あらゆる側面に及びます。

 

ファシリテーションは魔法ではなく、原理に基づいた方法です。考える方法を助け、無駄をなくし、集中力を増す規律です。

 

前職で死ぬほど苦労していた関係者調整は何だったんだろう、しなくていい苦労ばかりしていた、そのためにするべき仕事ができずにいた、それは必ずしも職場のせいだけではなかった、と気づきました。その証拠に1年後に同じ職場に呼ばれてコンサルタントとして仕事をしたときには全く別の風景が待っていたのです。ファシリテーションを知る者と知らない者との違いがそこには現れていました。

 

ファシリテーションは誰にでもできます。いわばクルマの運転のようなものです。クルマの運転と同じで、練習が必要です。トレーニングを受けただけで放置しておいたらペーパードライバー状態になります。しかし習ったことをきちんと実践し、活用して身につければ、クルマの運転のように楽々と当たり前のことをこなせるようになるのです。行きたいところへ早く安全に楽しく行けるようになり、他の皆を乗せて連れて行けるようになります。危険を察知して回避することもできるようになり、無駄な苦労をせずとも済むようになります。

 

クルマの運転と同じで、どんな道でも楽々通れるわけではありません。本質的に難しい道もあります。しかしクルマの性能と自分の運転能力を自覚していれば、無理な道は通らず、通る必要のある道を、適正なスピードで通ることができるようになります。

 

ファシリテーションはリーダーシップを発揮する上でほとんど不可欠といっても言い過ぎではないほどの重要な乗り物のひとつではないでしょうか。乗り方を覚えておくに越したことはありません。また、一度乗り方を覚えてしまいさえすれば、いちいち大騒ぎするようなものでもありません。

 

誰でも乗れる。練習が必要。安全を確認して、行き先を確認して、道順を確認して、道路をよく見て進むこと。

 

ドライバーの腕と心、人物と技術が信用できれば、乗客は安心して同行できます。信用できるリーダーには誰しもついて行きたくなります。自分だけでは行けないところに連れていってくれる乗り物。

 

リーダーシップの本質がここにあるのではないかと思っています。

 

サンタフェ通信11月2日より

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