人の性格を変えようとしない | コーチング | 田村洋一

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人の性格を変えようとしない

先日エグゼクティブコーチングを導入したいという企業クライアントからの依頼でコーチングについての説明会を開催しました。ほとんどがコーチングを見たことも聞いたこともない経営者の皆さん(会社役員や関連会社の社長)で、実に面白い質問がたくさんありました。

 

その中で「コーチングで変われる人と変われない人がいるのではないか。もう50歳をとうに過ぎて頭が堅くなっている人でもコーチングを受けて変われるのか」という質問がありました。

 

私の答えはこうです。

 

コーチングでは人を変えようとはしません。少なくとも私がエグゼクティブコーチングを行うとき、コーチングを受けているクライアントを変えようとは決してしません。これにはいくつか理由があります。

 

まず、性格を変えようとする人がやろうとすることは、弱点を直そうとすることです。これはほとんど不毛で、甲斐のない試みです。例えば短気な人がいて、怒らないように努力して、短気が治るでしょうか。直そうとすればするほど根っからの性格は変わらず、むしろ逆効果になります。

 

4年前、自他ともに認める短気なマネジャーがいました。物分かりの悪い部下がいるとついつい大きな声で叱りつけてしまうと自覚し、なんとかそれを直そうと努力してきたが、なかなか直らないといいます。その体験を詳しく聞いた後、私は「今度そういうことがあったら部下の顔をしっかり見て、はっきり叱りつけてみてください」と言いました。それを聞いた彼は「そんなことをしていいんですか」と言って驚いていましたが、「今までと同じですから、騙されたと思ってやってみてください。ただし相手の顔をよく見て、観察結果を私に知らせてもらえますか」と言うと、半信半疑の顔で承諾してくれました。

 

翌月のコーチングセッションでは驚きの報告がありました。彼はやはり部下を叱りつけていました。しかし私の提案をおぼえていて、しっかりと相手の様子を観察していました。そして3人の部下が三者三様の反応を示していること、自分の直言が届いている場合、届いていない場合、話し合いが効果的な場合、効果的でない場合とがあることに初めて気がついたというのです。

 

自分の短気を直そうと努力していたときには、自分のことに意識が向いていて、相手のことが見えていなかったのです。

 

自分を変える、相手を変えるという努力よりも、現実を観察し、結果を変える努力のほうが効果的なのです。

 

これは個人の性格だけではなく、組織の性格の場合も同じです。駄目なところを見つけて直そうとする介入は不毛で、多くの場合に逆効果になります。

 

組織のことについては別の機会にまたお話ししましょう。

 

サンタフェ通信11月23日より

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