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啓発された利己主義とお金

2019年5月にヤロン・ブルック氏が来日して、東京・有楽町でセミナーを開催します。私は通訳兼モデレーターとしてセミナーを主催する予定です。テーマはお金と哲学です。この二つのテーマには個人的な思い入れがあります。

 

今から30年くらい前、証券業務や投資銀行業務を支援する仕事をしていた頃のことです。「お金とは一体どういうものなのだろうか」と考えていたことがあります。

 

自分が携わる仕事には巨額のお金が関わっていて、自分が手にするのはその数パーセント以下の現金です。暮らしていくためにはそのわずかなお金を給与などで受け取り、手取りの収入から必要な支出をして生計を立てていきます。

 

社会の中にはそのわずかなお金すらなくて困窮している人たちもいれば、バブルの当時は不動産や金融資産を右から左に動かすだけで巨富を得ている人たちもいました。

 

「自分がやっている仕事は人のためや社会のためになっているのだろうか」

 

「自分がもっとお金を稼ぐには何をしたらいいのだろうか。何をしてはいけないのだろうか」

 

私は社会人になる前に学校で政治思想や道徳哲学などを学んでいましたが、社会に出て直面した具体的な状況に答えるだけの智慧を持っていませんでした。なんとなくモヤモヤしたまま会社勤めを続け、日々の多忙に追われていました。

 

私がお金について決定的な指針を得たのは、その後アメリカに渡り、すでに他界していたアメリカの思想家アイン・ランドの倫理的利己主義に出会ってからです。

 

アイン・ランドの道徳哲学は、啓発された利己主義(enlightened egoism)とでも呼ぶべきものです。人間は一個人として自分のために生きるべきだ、社会のために自分を犠牲にしてはならない、個人に自己犠牲を強いる思想は必ず全体主義につながり、文明を滅ぼし、人間を堕落させる、というのです。

 

古今東西いろいろな思想がありますが、ここまで徹底した哲学は他に聞いたことがありません。

 

そして「お金」については、よく誤解される「諸悪の根源」などではないばかりか、人間の知恵と力を集約した「諸善の根源」とでもいうべき文明の利器だというのです。

 

私の長年の疑問は氷解しました。

 

それまで何となくお金を稼ぎすぎるのは罪なのではないか、お金は貧しい人たちに分け与える義務があるのではないか、贅沢なことにお金を使うのはよくないのではないか、などの漠然とした観念が頭の中にありました。それが霧が晴れるように消え去り、豊かで自由な人生のためにお金を道具として使うことの意味がはっきりと得心できたのです。

 

ヤロン・ブルックの話を聞いたのはさらに何年も後のことです。イスラエルで生まれ育ち、渡米してアメリカに帰化したヤロンは、やはりアイン・ランドの哲学を知り、自分の生き方そのものを大きく変える影響を受けました。ヤロンは金融の専門家でもあります。教育機関で教鞭をとると同時に、ファンドのマネジメントや助言にも携わっています。私自身ヤロンの講義を聞いて自分の資産管理を見直す機会を得ました。

 

ヤロンが詳しいアイン・ランドの哲学は、人が個人としてどう生きるかだけではなく、社会経済制度がどうあるべきかについて明確な示唆を与えるものです。

 

今回の来日を機会に、

 

・お金とはいったい何なのか
・利己的に生きることとお金

 

などの根源的な問いを皮切りに、

 

・ブロックチェーンと将来の通貨
・各国中央銀行と世界の通貨制度

 

などの社会経済システムについて知り、

 

・私たちはどのようにお金を扱ったらいいのか
・いい人生にとって必要なお金はどんなものか

 

などの実践的な考察を行いたいと思います。

 

お金と哲学に興味を持つ人はぜひ気軽に参加してください。

 

https://kokucheese.com/event/index/559748/

 

サンタフェ通信4月5日より

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