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人と組織の変化を見守る仕事

ある企業のエグゼクティブコーチングが終盤に差し掛かってきて、終了後のビジョンを関係者と共有していたら、

 

「あれほど大変な状況だったのに、一体どんなコーチングをしたらそんなに変化したのか、ぜひ教えてほしい」

 

と言われました。

 

エグゼクティブコーチングはまだ進行中で、勝利宣言をするには早すぎます。望む方向の変化が定着してコーチングを終了し、その後の発展を見届けて初めて価値があったと信じられます。

 

が、コーチングで何をしたら効果があるのかについてはこの20年でしょっちゅう聞かれる質問なので、少しだけ整理してみます。

 

まず第一に、コーチングを行うのはコーチではなく、クライアントだということです。

 

もちろんプロのコーチは契約と報酬のもとにプログラムを主導します。スポンサーと合意を形成し、プログラムを提示し、スケジュールを管理し、セッションを開始し、セッションを終了し、スポンサーに報告し、関係者と連絡します。

 

しかしコーチングを受けて学んで行動し、行動の結果から学んで成長するのは、全てクライアントの仕事です。コーチの仕事はそれを促し、見守り、確かなものにするよう手助けするだけです。

 

ですからプロのエグゼクティブコーチが何をするか、で言えば、クライアントが自分の仕事を全うできるように、コーチはなるべく何もしない、ということになります。

 

コーチングでアドバイスはするのか、とよく聞かれる質問があります。エグゼクティブコーチングのプロセスでは、ときにコーチがクライアントにアドバイスを求められ、アドバイスを提供することもあります。しかしそれも非常に用心深く、クライアントの気づきや学びを刺激する程度に行います。「あなたはリーダーとしてこう振舞うべきだ」というような教示は決して行いません。

 

コーチングではアドバイスを絶対にすべきでない、と決めているコーチもいるらしいのですが、それもまた無意味な思い込みではないかと思います。コーチングのプロセスは流動的で、ときには明確な指南がクライアントを助け、プログラムが終わって何年も経ってからもその指南が役立っていることがあります。

 

エグゼクティブコーチングのクライアントとは、関係が長く続き、契約終了してから10年以上も連絡が途絶えないこともあります。コーチングの「成功」には何段階もあって、スタートしてすぐに「コーチングを初めてよかった」と感謝されることもあるし、終わって長い時間が経ってから感謝されることもあります。特定の個人の変化に留まらず、組織の発展に寄与することが期待されています。そうなると、ときにプロのエグゼクティブコーチは、実際にその組織にいる人たちよりも長くその組織を見守ることになります。

 

この仕事に携わるようになって21年目です。この先どのくらい同じ仕事を続けていくかわかりませんが、見守ることだけはずっと続けていくことになると思っています。

サンタフェ通信5月31日より

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