このエントリーをはてなブックマークに追加

ビギナーズラックの正体

私は職業ファシリテーターとして企業クライアントの組織開発や風土醸成、対話の促進やチームの構築・再構築に日常的に携わっていますが、私自身がファシリテーターとして活動するばかりでなく、ひとをファシリテーターとして育成する機会にも恵まれてきました。教育ワークショップの形式で大勢をいっぺんにトレーニングする場合もあれば、プロジェクトやプログラムで一人や少人数のトレーニングに関わる場合もあります。

 

その中で、ビギナーなのにプロ顔負けに上手な人に出会うこともたびたびあります。

 

天性の才能もあれば、今までのビジネス経験や人生経験もあります。ファシリテーションとは人や組織と関わる際の知恵や方法を体系化したものですから、ときには常識的なやり方のこともするのです(常識破りな場合もありますが)。

 

ところが、ファシリテーションのスキルを高めよう、理解を深めようとして学習して実践していくうちに、なぜだかファシリテーションが急に難しくなってしまう人もいます。最初にできたことが、今はできない、ビギナーのときに楽々やっていたことが、経験者になった今は難しい、ということになります。

 

これはどういうことでしょうか。学習があだになってしまったのでしょうか。学び方が悪いのでしょうか。

 

これはファシリテーターの総合力の問題だと思っています。

 

ビギナーの多くは、場に存在するたくさんのシグナルに気がつかずに、天真爛漫にファシリテーションしています。ファシリテーターをすることの怖さに無自覚にファシリテーションしています。

 

学習して経験を積むと、だんだん怖さがわかってきます。場を読む力も増してきます。眼が肥えてきます。場のリスクを感じとれるようになります。

 

経験を積み、学習していくと、ビギナーにはわからないことがわかってしまうのです。わかった分だけ難しくなってしまうのです。

 

ビギナーズラックとは、「わからない」ことから来る強みだと言えるでしょう。

 

ファシリテーターは体験と内省を通じて自らの総合力を高める必要があります。知識が増えて技術が上がるだけでは総合力に繋がりません。感覚的にわかることを咀嚼して受け入れるだけの度量を養うこと。膨大な情報に圧倒されない頭の強さ、心の穏やかさ。人への優しさ、厳しさ、妥協のなさ、融通無礙、虚心坦懐、クリティカルであること、矛盾を受け入れ、葛藤を超えること。

 

ビギナーズラックはビギナーズラックとして祝福したらいいのです。肝腎なのは、そこから先のどこに向かうのかを自覚的に定めることです。

 

旅は冒険に充ちています。

 

(2012年8月の文章をアップデート)

 

サンタフェ通信8月2日より

トップへ戻る