一隅を照らす | 田村洋一 | サンタフェ通信

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一隅を照らす

 

 若い頃は何かに秀でよう、人に抜きん出ようとして、自分を高めようとする。

 

 それは悪くありません。勝ち気も負けん気もプラスになる。

 

 少し歳を重ねると、本当に大切なのは自分じゃなくて自分の世界だと気づきます。自分を高めることばかりじゃなく、自分の見ている世界をよくすることのほうが大切に思えてきます。

 

 自分がこの世から退場しても世界は残るのだから。

 

 自分が秀でることはそれほど大切じゃないのです。自分は世界よりもずっと小さい。ちっぽけな存在でしかない。

 

 そしてさらに月日が経つと、ある種の諦念が生まれてくるのです。

 

 自分が世界に対して貢献できることなんて、本当にたかがしれている。どんなに大きな仕事をしても、人がひとりでできることなど大したことではない。

 

 だいたい世界を変えようなんておこがましい。自分が退場したあとに続いていく世界のほうがはるかに大きいのだし。

 

 一隅を照らすという言葉があります。(最澄の言葉が出典らしい。)自分の生息する世界の片隅。それを照らすことさえできればそれで充分です。そのくらいしかできないし、それだけできたら上等です。

 

 世界をよくすることだとか世間から立派と認められることなどは、もちろんそれなりに大切かもしれなません。でも人間の生涯にとって本当に大切なのはそんなことじゃなく、一隅を照らすこと。

 

 これに尽きます。

 

 今この瞬間を充実して生きること。

 

 目の前の現実にありったけの精一杯で取り組むこと。

 

 他人の評価や仕事の成果は二の次なのです。

 

 

サンタフェ通信3月21日号より一部抜粋しています。


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