葦の髄から天井を覗く | 田村洋一 | サンタフェ通信

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葦の髄から天井を覗く

 

 「葦の髄から天井を覗く」という言い回しがあります。

 

 「細い葦の茎の管を通して天井を見て、それで天井の全体を見たと思い込むこと」から、自分の狭い見識に基づいて勝手に判断することを言います。

 

 最近「葦の髄から天井を覗いてるなあ」と感じるのは、4週間前に網膜剥離の手術を受けてから朝から晩までサングラスをしたまま暮らしていることと無関係ではありません。

 

 明るい陽光の中でも世界は暗く見えます。

 

 本当の世界は、広くて明るくて、とても人間の眼では捉えきれない。とても自分の眼などで捉えられない。自分は世界のほんの一部をたまたま覗かせてもらっているだけ。

 

 そういう感覚にとらわれます。

 

 でも「本当の世界」とは何でしょうか。サングラスを通して見える暗い世界はウソで、サングラスを外して見える明るい世界は本当なのでしょうか。

 

 そう考えると、私たち人間はおしなべて自分の感覚の限界の中で世界を知覚していると実感できます。たまたま一般的な人間の視力で目に映る世界が「本当」で、病によって限定された視野に映る世界が間違いなわけではない。大同小異なのです。

 

 私たちはそもそも「葦の髄から天井を覗く」ことを、四六時中やりながら、そのことに気づいていません。

 

 網膜剥離とその治療プロセスは、そのことにはっきり気づかせてくれました。

 

 私たちは例外なく限られた能力で世界を見ています。

 

 肝心なのは、そのことに気づいた上で、世界をいかに捉え直すか、です。

 

 

サンタフェ通信8月25日号より一部抜粋しています。


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