肉を切らせて骨を断つ | 田村洋一 | サンタフェ通信

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肉を切らせて骨を断つ

 

ディベートが面白いのは、論題について深く広く明白に考え抜くことであり、それによって何事にも素早く思考を巡らすことができるようになることです。

 

しかし、それだけではありません。ディベートはゲームです。ディベートには競技性があります。真面目に調査して分析して議論するだけではなく、いろいろな策謀を
巡らすこと自体が面白いのです。

 

例えば、駄目な議論をわざと出したりします。すると、敵は「しめた!」とばかりに反論してきます。その反論を待って再反論を行い、本丸を取るのです。

 

わざと負ける議論を出す。案の定、その議論は負ける。そして議論に負けたことによって試合に勝つ。そうです、肉を切らせて骨を断つのです。

 

こういうゲーム性はゲームに興じているディベーターにとってはごく当たり前のことです。しかし、ディベートを知らない人は「正直じゃない」「姑息だ」「詭弁だ」「非教育的だ」などと思うかもしれません。

 

考えてみてください。これが競技スポーツだったなら、わざとミスをして相手を陽動して試合全体を有利にすることなど、初歩的な戦術です。格闘技や武術においても
然り。負けて勝つ、など基本的な戦略のひとつです。

 

ディベートを知らない人たちがディベートのゲーム性を理解しないだけのことなのです。

 

そしてここで大切なのは、このディベートのゲーム性が実生活やビジネスにおいて非常に有効だということです。

 

交渉事なら、相手に花を持たせてこちらが実をとります。(もちろん相手に持たせた「花」は相手にとっては「実」なのかもしれない。そうならウィンウィン。)

 

明白な交渉事だけに限りません。上司と議論して勝っても仕方ない。上司に議論で勝てば、負けた上司の顔を潰してしまう。その場合にもっと有効なのは、初っ端から上司が議論に勝つようにし向け、それによって起こる結果を予想して事を運ぶのです。

 

ディベートの試合は、そういう「肉を切らせて骨を断つ」戦略や戦術の実験場です。

 

サンタフェ通信9月19日号より一部抜粋しています。


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