極上を知れば普通も楽しめる | 田村洋一 | サンタフェ通信

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極上を知れば普通も楽しめる

 今年はかき氷が最高においしい夏でした。 (あくまでも個人的体験の話です。)

 

 アイスクリームが好きなわりにかき氷はそれほどでもなかったのですが、この夏、木挽町の木挽茶屋や京橋のカストールなどの提供するかき氷に出会い、「これはおいしい。芸術作品だ」と思えるほどの極上の体験を繰り返ししたのです。

 

 いったん極上の味を知ると、そのカテゴリー全体を愛することができるようになります。ごく普通のかき氷を食べても、極上に出会う以前とは味わいの仕方がもう変わっているのです。

 

 (以前「最高のワインの味を知ったら普通のワインは飲めない」と言う自称「ワイン通」の人がいましたが、こういう人たちは心や体で味わうのではなく、頭や知識で味わっているつもりになっているのだと思います。)

 

 個人的な体験としては、かき氷以外にもたくさんあります。1988年の讃岐うどん、 1992年の生ウニ、 2001年の奈良漬け。新しい味を知ることは冒険にも似たプロセスです。

 

 素晴らしい旅行の体験は、旅行から帰った日常の中に新たな喜びを持ち込むことにもなります。旅行先のエキゾチックな経験が、ありふれた日常の中に新鮮な驚きを作り出すのです。

 

 これはプライミング効果という概念によって説明することもできます。新たな体験によって自分の中に新感覚が芽生え、ある種の刺激に対するアンテナが磨かれることになるのです。

 

 私は長年東京に住んでいます。東京で暮らすことの多くが私にとっては当たり前のことです。しかし考えてみてください。毎日世界中からびっくりするほどたくさんの人たちが観光客として訪れ、自分の時間とお金を使って観光を楽しんでいるのです。

 

 これは東京に限った話ではありません。どこに住んでいようと同じことです。自分の住んでいるところをあたかも観光地のように、観光客になった気分で体験し直すことはできるのでしょうか。

 

 

 

サンタフェ通信9月27日号より一部抜粋しています。


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