江戸しぐさというフィクション | 田村洋一 | サンタフェ通信

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江戸しぐさというフィクション

 

 傘かしげ、うかつあやまり、こぶし腰浮かせ、時泥棒…
http://ja.m.wikipedia.org/wiki/江戸しぐさ

 

 こうした「江戸しぐさ」なるマナーが20世紀に捏造されたフィクションであることを、原田実さんが著書で解明しています。(興味のある人は、原田実「江戸しぐさの正体教育をむしばむ偽りの伝統」星海社新書、2014年 を参照してください。)

 

 江戸時代にこのようなマナーの体系は存在しませんでした。

 

 それは常識で考えてみればわかるものばかりです。例えば、時泥棒というのは事前のアポイントなしに訪問してひとの時間を奪うことだそうなのですが、電話もない江戸時代に「今から訪問しますよ」と事前のアポイントがとれるはずもありません。また、時計の普及していない時代に正確なアポイントなどありようもなく、江戸時代の人々はお寺の鐘の音を頼りに大体の時間を知って暮らしていたのです。

 

 傘かしげというのは、往来で傘をさした同士が擦れ違う際、道の両脇に傘をかしげるマナーだそうです。江戸時代には現代のような傘は普及しておらず、和傘の場合はかしげるのではなく、すぼめるのが自然なのです。

 

 「江戸しぐさ」なるものの正体は、西洋流マナーをベースにして現代日本風にアレンジした独特なフィクションで、江戸時代とも江戸の文化とも何の関係もないものです。

 

 そんなまがい物が平成になって流行し、小学校の教科書に載るまでになってしまったのはなぜなのか、などの事情が原田実さんの著書に詳しく解説されています。興味のある人はぜひ一読することをお薦めします。

 

 私が気になるのは、「江戸しぐさがフィクションだって、それがマナーを教えるツールとして便利なら別にいいじゃないか」という御都合主義的な意見です。

 

 これについてはまた今度。

 

 (つづく)

 

サンタフェ通信11月21日号より一部抜粋しています。


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