Writings | 田村洋一 | サンタフェ通信

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駅前の寿司屋 2

 

 午後のミーティングを終えて帰路につく。南馬込に着いたときはもう3時近く。ふとランチを食べ損ねていたことに気づく。そして目の前の駅前のあの寿司屋が…。

 

 暖簾が半分畳んだように折ってある。もしかして休憩中かと思ったが、構わずドアを開けて中に入る。このあいだと同じだ。カウンターの向こうに職人がひとり。背を向けたまま何やら片付けをしている。

 

 「いらっしゃい。ランチ?」と聞かれ、はいと答えると、「握り?」と言うから、握りで、と答えた。

 

 「こんな時間に昼飯かい。忙しいね」と言うので、ええ、まあ、と曖昧に返事をしていると、寿司を握りながら、「寿司はうまいだろ?」と聞くので、うまいですね、と答える。

 

 「そんなに働いてるんだから毎日寿司を食ったってバチは当たらねえよ。変な弁当を食ったっておんなじなんだから」と言いながら次々と握ってくる。シャリもネタもワカメの味噌汁もうまい。玉子もうまい。

 

 「これは塩だよ」と塩の味付けの貝の握りを出してくれる。貝もうまい。ぱくついていると、「鯛だよ。おまけだ」とまたまた追加で握ってくれる。

 

 もちろん鯛もうまい。

 

 ごちそうさま、と言うと、「千二百円。ちょうどある?あったらそこに置いといて」と言われるので、千二百円をカウンター席に置く。

 

 「今からまた頑張るんだろ? 頑張って」と声をかけられ、ごちそうさま、と言いながら店を出る。

 

 さあ、これから頑張ろう。

 

サンタフェ通信12月5日号より一部抜粋しています。


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