マインドフルに生きるということ | 田村洋一 | サンタフェ通信

このエントリーをはてなブックマークに追加

マインドフルに生きるということ

 

夜遅い時間に料理屋に入ろうとすると、「まもなくラストオーダーの時間ですが…」と言われることがあります。皆さんはそういうときにどうしますか。

 

私は「はい、大丈夫です」と言って店に入ります。すぐ注文してすぐ食事して長居はせずに店を出るとわかっているからです。

 

ところが、これを言われると自動的に入店しないという人たちがいるのだと知って仰天しました。

 

仰天したのはその理由です。

 

「せっかく食事するのだからゆっくり飲食したい」というのなら合理的に理解できます。食事は社交や歓談を目的とした口実であることも多いのですから無理からぬ気持ちです。

 

しかし夜の遅い時間に入店しようとしているのですから、そういうときは最初っから遅い時間まで営業しているバーに行くべきです。

 

そういうことではなく、「まもなくラストオーダー」と言われた瞬間に入店を取りやめる人たちの理由は、「歓迎されていないから」だそうです。

 

「まもなくラストオーダーの時間です」という店員は、「こんな閉店間際に入店して仕事を増やさないでくれ。こっちは早く上がりたいんだ」という気持ちの従業員で、そんな店員にサービスされたくないのだというのです。

 

もちろん、それは、理解できます。私自身も料理屋の厨房で働いていたことがあります(もはや30年以上も昔のことですが)。店員が店のオーナーと同じように来店客を歓迎しているとは限らないことはわかります。

 

しかし、その従業員は、実際には、どういう気持ちで「まもなくラストオーダー」と言っているのでしょうか。本当に嫌な気持ちで言っているのでしょうか。

 

それは事実なのでしょうか。

 

もしかしたら単なる空想ではないのでしょうか。

 

システム思考の専門用語で「推論の梯子」という言葉があります。私たち人間は何かの観察データに接した瞬間に推論し、あっという間に自分が解釈した物語の虜になってしまうのです。「まもなくラストオーダー」と聞いた瞬間に、自動的に「歓迎されざる客」という結論に飛びついてしまいます。その推論が正しいか、確からしいか、の検証など一切せずに。

 

「推論の梯子」は、ほんの刹那にほとんど気づく間もないほどの短い時間で上ってしまいます。そんな梯子を上った自覚などないのが普通です。

 

システム思考を実践するときは、注意深く推論の梯子を降りていく作業を丹念に行います。

 

マインドフルになるというのは、何か特殊な瞑想法や呼吸法を習うことではありません。いつも我に返って目の前のリアリティに丁寧に気づいていることです。

 

もちろん瞑想法や呼吸法は役に立ちます。しかし本当に大切なのは、日常生活でマインドフルに暮らすことです。

 

推論の梯子を丁寧に降りてみることです。

 

マインドフルに生きることです。

 

サンタフェ通信5月15日号より一部抜粋しています。


ホーム RSS購読 サイトマップ